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私の作文教育実践研究のこれまでとこれから

私は20世紀末の​1999年に教職に奉職し、初任時より一貫して作文教育にこだわりを持って実践をしてきました。

その中で、レポート、論文として発表したものを中心に、ここに集約し「作文教育実践研究の歩み」として記録に残しておきたいと思います。

それぞれ自分の作文教育観、指導観が変わってきたなというきっかけごとに時期を区切り、影響を受けた本、行った実践やレポートなどについて思い出して書いてみます。

 

 

初任〜(一校目) 作文教育観の模索

【当時、作文指導について影響を受けた本】

『高校生のための文章読本』

『文章表現法講義』加藤典洋

『作文の教師ー指導法の手引き』倉沢栄吉
『作文で鍛える 上・下』『文集で鍛える』野口芳宏
『国語のできる子どもを育てる』工藤順一

『第三の書く』青木幹勇

『知の編集術』松岡正剛

​『理科系の作文技術』木下是雄

『作文の授業改革論』市毛勝雄

『新編 教室を生き生きと1・2』『大村はま国語教室』大村はま

「自分にしか書けないことを誰が読んでもわかるように」という言葉と出会い、これが作文指導の本質だ!と悟る。教室のなかの○○さん、●●くんに「しか」書けないことは何かを探したり、それを引き出す指導、支援に没頭。年度末には毎年文集作りに取り組み、子供たちとその成果を共有した。

初任期より、国語教育、とくに作文指導に関する文献を手当たり次第に読む。その頃はインターネット、SNSなどもちろん発達していなかったので、図書館に行ったり、大きな書店などに行って棚に並んでいる本の中から選んで買い求めていった。

その頃、青木幹勇の『第三の書く』に衝撃を受ける。初任研の課題研究レポートでは「書くことを中心とした国語科授業の提案ー書くことへの抵抗を少なくするための工夫ー」について書いた。書くことの抵抗感についての分析と、それを軽減するための工夫(視写・四コマ漫画作文・ことわざ・故事成語ハンドブックなどの実の場に立った出版学習)などについての実践をまとめた。

三年目には「論理的な文章を書かせる指導の工夫(失敗から学ぶ)」と題し、君津支部教育研究集会にてレポート提案をした。

畑村洋太郎氏の「失敗学」を援用して、作文に関する実践でうまくいかなかったものについての分析をした。

発表そのものはほとんど理解されず、ばっさりと否定されてしまった。(結局「失敗」の部分はごっそり削除して、千葉県の研究集会で発表することになった)

君津市在住時代は野口芳宏先生のご自宅で毎月行われている木更津技法研に参加。国語教育全般において薫陶を受けたが、とくに作文指導に直接関わる研究の成果としては、このサークルで協働して制作した『作文力を鍛える新「作文ワーク」』『書く力をつける一文マスターカード』などがある。明瞭で達意な文章を書くための「一文」の大切さを野口先生およびサークルメンバーから学ぶことができた。

 

6年目~(二・三校目)読み書き関連指導に傾倒

【影響を受けた本】

『ことばがひろがる Ⅰ・Ⅱ」卯月啓子・首藤久義

『書くことの学習支援―場を作り個に即して書く生活の向上を助ける (楽しい国語) 』首藤久義

『「学び」をひらく国語教室』安居 總子

『第三の書く』以降、ずっと気になっていた読み書き関連指導について本格的に実践を進める。

「書きながら読む」というテーマで千葉大学国語教育研修会、日本国語教育学会中学校部会で発表。

視写絵本、小説のシナリオ化、手紙に書き換え、続き話などの読むことと書くこととを融合させた実践を数多く行った。

首藤久義先生とともに「翻作法」や出版学習に関する実践をしていた卯月啓子先生の勉強会(卯の花会)に参加。翻作法についての手ほどきを直接受けた。

 

11年目~(四・現任校)文種に応じた指導 & 読み書き関連指導→編集へ

【影響を受けた本】

『発見を導く表現指導―作文教育におけるインベンション指導の実際』田中宏幸

『誰もがつけたい説明力』井上一郎

『作文カンファレンスによる表現指導』木村正幹

『ライティング・ワークショップー「書く」ことが好きになる 教え方・学び方』ラルフ・フレッチャー

『情報大爆発ーコミュニケーション・デザインはどう変わるか』秋山隆平

『新世紀メディア論ー新聞・雑誌が死ぬ前に』小林弘人

『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる』佐々木俊尚

『はじめての編集』菅付雅信

『なぜ人は書くのか』茂呂雄二

研究校である千葉大学教育学部附属中学校に着任。千葉大附属中在任の五年間は寺井正憲先生が共同研究者としてご指導。作文指導について専門的に研究を深めることができた。(四人の国語科スタッフでそれぞれ「話す聞く」『書く」「読む」「古典」の研究の分担が決まっていたが、私は二年目から三年間「書くこと」を担当した。)

また千葉大学大学院に入学(後述)、そこで首藤久義先生から直接「翻作法」や「ホールランゲージ」、芦田恵之助の教育観についてご指導を受けることができた。

千葉大附属中では文種、ジャンルに応じた指導、レトリック・語彙に着目した指導の開発に着手。学習指導要領で新たに取り入れられた文種についての学習指導法を開発し、公開研究会で実践提案をした。また、国語科スタッフ四人で共同で「交流」について実践研究をした。

これらの研究成果は下記の論文としてまとめている。(各リンク先に指導案またはレポートがあり)

【エッセーの授業開発】私もエッセイスト~自分の考えを生み出すエッセイ学習~(2010年)

【批評文の授業開発】「成人の日」の社説を批評する~交流で広げる・深める自分の考え~(2011年)

【「交流」についての研究】「書くこと」の学習におけるのぞましい交流のあり方~交流を活かした「書くこと」学習の単元開発を通して​(2011年)

【創作の授業開発】中学校における「創作」の言語活動の工夫ー「想の展開」を促す「触媒」となる支援を中心としてー(2013年)

​【小説創作の授業開発】短編小説創作道場(2014年)
 

このころ、上條晴夫先生からのお誘いがあり、共著で『中学生を作文好きにする!新レシピ60&ワークシート交流+評価の工夫で言語活動を活性化』という作文ワークブックの制作に携わった。このワークブックには「文種」ごとの言語活動を明確に位置づけたり、「交流」を作文制作過程に取り入れた学習活動を構成するなど、千葉大附属中時代の研究内容を反映させた実践を掲載している。

一方、初任時より関心の高かった読み書き関連指導について「編集」という視点で大学院で研究することを決意する。

千葉大学大学院教育学研究科 教科教育学専攻 言語・社会系に入学。藤川大祐研究室(授業実践開発研究室)に所属して「中学校における『編集力』を高める授業の開発」というテーマで修士論文を書き上げた。

この論文では、中学生が小林一茶の作品の展示を企画する学習や、戦争体験者にインタビューしてグループで雑誌を編集する学習を取り上げ、その学習過程で機能している「編集力」について質的に分析する研究をまとめた。

純然とした作文指導というよりも、社会の中で発信者としてさまざまなテキストを編み上げていく、メディア情報リテラシー、情報活用能力育成の一環として書くこと指導を再定義した実践を開発しようとしている。

修士論文の全文は公開していないが、以下でその一部を読むことができる。

【研究全体について】中学校国語科における「編集力」を高める授業の開発(全国大学国語教育学会で発表したPPT)

【一茶企画展】キュレーションを活かした古典教育の可能性に関する一考察 ー単元「小林一茶企画展」の授業を通してー

【グループ雑誌編集】中学校国語科における編集力を高める授業の開発ー単元「戦争の記憶を受け継ぐ」授業の開発ー

なお、読み書き関連指導の「書きながら読む」だけでなく「聞きながら書く」学習として「聞き書き」に着目。

聞き手が話し手の言葉を引き出し、再構成して発信していく編集過程をとらえた実践を行っている。

能動的な聞き手を育てる授業の開発ー「聞き書き入門(中一)」の授業を通してー

17年目~18年目(現任校) テクニカルライティング技術への着眼

【影響を受けている本】

『説明文理解の心理学』岸学

『こうすればわかりやすい表現になる 認知表現学への招待』海保博之

『日本語スタイルガイド』

 

「書き手の『思い』の表出」という視点だけでなく、「読み手の視点」や「認知の特性」まで考慮した戦略的な表現技術の獲得という視点で、これからの書くこと指導、文章表現指導を模索していきたいと考えた。

そこで、認知心理学者の荷方邦夫先生との共同研究で「テクニカルライティング技術」についての作文指導の授業開発を行った。

開発した授業は、中学生が「紅茶の入れ方マニュアル」をつくるという実践。
実践研究では、おいしい紅茶をいれるわざをどのようにとらえ、それをどうやってマニュアルとして表現したかという視点で分析した。

中学生はどのように「わざ」を言葉で伝えようとしたか~「日本で一番分かりやすい紅茶の入れ方マニュアル」(中2)の授業を通して~

19年目~現在(現任校) 感性的思考を活かした書くことの指導

【影響を受けている本】

説明文理解の心理学』岸学

『こうすればわかりやすい表現になる 認知表現学への招待』海保博之

『日本語スタイルガイド』

所属している国語教育実践理論研究会では「感性的思考」に焦点を当てた研究を行っている。

その研究会での提案で、感性的思考を書くことの学習に生かした実践を行った。

「色」はどのように中学生の詩情を引き出したか 〜「色から生まれる詩の世界」の授業から~

国語教育実践理論研究会(KZR)の大会で提案した、詩の創作の授業についてのレポートである。
140色の色紙を用意し、自分が選んだ色からイメージをふくらませて思い思いの詩をつくっていった。
詩の創作の学習を通してどのように学習者の「感性的思考」が引き出されて発揮されたか、実際の生徒の作品や解説から考察している。

 

 

 

 

 

 

 


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