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書く力をつけるための授業のあり方


1、表現することの喜びを味わわせる
~自分にしか書けないことを、誰が読んでもわかるように~
書く力の根底にあるのは、表現する意欲である。どんなに教師が教え込んでも、根底に表現意欲がない場合、また、表現意欲があってもそれを認め合う環境がないと、十分に書く力が伸びない。
のびのびと書く活動を設定し、表現することの意欲を高めることが必要だ。何を言っても、どんなことを書いても馬鹿にされない関係性、正直に書いても否定されないという気持ちを根底に持たせることが必要である。
具体的な手立てとして、
・表現意欲を引き出す魅力的な課題
・仲間の表現を読み合い、楽しむ関係性
・書き慣れる、書くことの抵抗感を減らす工夫
などが必要となるだろう。

2、型を習得し、型を自在に使いこなせるようにする。
それぞれのジャンルには特有の文章構成の型なり、文体〈スタイル)は内包されている。
とくに、論理的な意見文などでは文章構成の型がある程度決まっている。それらの型を確実に習得し、使いこなせるような指導をすることが書く力をつけることができる。
トレーニングとしての書く学習、同じジャンルや形式を、題材を換えて繰り返して練習することが必要だ。
スポーツの世界の「素振り」のように、基本的な技術が凝縮されている「型」なり、モデルを教師が与え、それを参照させたり模倣させたりすることで型を習得させていく。
文章表現の世界にも「守・破・離」のプロセスが必要である。

3、文学的文章と、非文学的文章、実生活に関連する文章と、実生活には直接関連しない文章を書く力をともに高める
実用的な文章を書くトレーニングだけだと、学習が単調になり、表現の豊かさや広がりが生まれにくい。
ときには、非実用的な架空の課題、虚構を書かせることで、表現世界を広げることも重要である。
トレーニング「練習」としての作文課題と、既習内容を活用した「試合」としての書く活動の両方が必要である。

4、自己を見つめ、思考を鍛える書く学習
書くことは自己を見つめることでもある。また、書くことで自分の考えを整理することができる。
書く型を身につけることで、思考の方法を学ぶことができる。
具体的な相手や目的を想定した、実用的な文章も必要ではあるが、ときには自己を見つめたり、思考を深めるような書く学習を行うことも必要であろう。
自己を見つめたり、思考を鍛えたりすることを目的とした書く学習においては、「記述」段階よりも、「発想」や「構成」段階の学習が重要になってくる。書かれたものを、「指導」と称して教師が添削するのが書くことの指導ではない。
書きあげるまでのプロセスに寄り添って、教師が発想のスキルや構成段階の支援をする「インベンジョン指導」(田中宏幸、1998)が重要になる。

5、読み手の立場に立って書く、書き手の立場に立って読む
書く学習は膨大な読む経験に支えられている。
文章の読解をするときに、常に、自分の文章表現に活かせられるように意識付けをさせていきたい。
また、文章を書くときには、常に読み手としての第三の目を持って、文章を読み返すことが必要である。
読むことと書くことの学習は常に同一平面上にある。
他の生徒の作文を読み合う「交流」の学習は、自分の表現に生かすことができる絶好の学習の機会である。

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