国語教育授業実践開発研究室
読書活動における三類型、給食型活動とお弁当型活動、そして立食パーティー型活動。
読書活動、読書指導は、子どもがどのようにして本に手を伸ばすかという点に着目すると、次の三つにタイプに分けることができる。
給食型活動とお弁当型活動、そして立食パーティー型活動である。
給食型の活動とは、全員が同じものを食べる。つまり、同じテキストを読んで学ぶスタイルの学習。教科書教材を取り上げた授業、読書活動における「集団読書」がこれに当たる。
一方、それぞれがテキストを持ち寄って、お気に入りの本を読んだり、交流し合うタイプの授業は、いわばお弁当型の読書活動。
さらには、教師が魅力的な本のラインナップを用意して、それを子どもたちの主体性に任せて取り分けさせるスタイルの読書活動は、言ってみれば、立食パーティー型の読書活動ということになるか。
給食型読書活動の課題
給食型読書活動とは、古くは集団読書、最近ではリーディングワークショップ、リテラチャーサークル、ブッククラブなどの読書会、読書へのアニマシオンなどの読書ゲーム、さらには教師によるブックトークや読み聞かせも、広い意味でとらえればこのカテゴリーにはまりそうだ。(しかし、現状では十分な授業時間が確保できないためか、中学校において集団読書的な取り組みはほとんど行われていないのが現状だろう)
学校で取り組まれる給食は、そもそも貧富の差に関係なくバランスのとれた食事をとらせることが目的だったと聞く、
現在、その給食の位置づけも変化しつつある。
ほとんどの家庭では食べるものには困らなくなった。だがら、栄養をとらせるということももちろんあるが、それ以上に良好な食習慣を形成したり、食のありかた、意義を学ぶ機会としての「食育」として位置づけである。
「給食型読書活動」のあり方のヒントは、実は「食育」にあるのではないか。バランスのよい栄養をとるということだけでなく、日常の読書生活をふりかえり、読書の習慣を形成したり、読書の意義を考えてみる機会としての読書活動である。
そもそも、日常の食生活と最もかけ離れた食事が「給食」だ。日常の読書生活ともっともかけ離れた読書が「集団読書」でもある。好きな本を好きなように読ませずに、全員が同じ本を、同じ読むスピードで、同じ読み方をして読む。そのような「不自然」な読書活動であるからこそ、教師は日常の読書生活との関連性を意識することが必要だし、その不自然な読書活動と、日常の読書とを対置させる意義も生まれるのである。
日常の読書生活との連続性をどのように考えるかが、給食型読書活動の課題であろう。
お弁当型読書活動
お弁当型の読書活動の基本は、自分で本を用意してくるところにある。(もちろん、本は自分で買っても、図書館で借りてもよい)
たとえば、朝読書や好きな本の紹介、推薦などの読書活動がこれに当たる。
さらには自分が選んだ本の読書感想文、読書感想画に取り組んだり、ポスター、ポップづくりなどの表現につなげていくスタイルの読書活動も、お弁当型の読書活動のスタイルをとるものが多いだろう。
好きな本を選んで活動をすることは、子どもの主体的な意欲を尊重するという意味では意義のあることだろう。好きな本がある生徒はきっと進んで学習にも取り組むだろう。
しかし、読書の習慣がほとんどなく、好きな本が見当たらない生徒にとっては「好きな本を」という自由が制約になることもある。それで、好きな本がない生徒、読書の意欲がそれほど高くない生徒は、仕方なく、図書館にある本(で簡単に読めそうなもの)を適当にとって形にしようとする。
いやいや紹介したり、仕方なく選んだ本では、せっかくの読書活動が十分に魅力的なものにすることができない。
読書が嫌いなのは、言い換えれば、自分を虜にするような魅力的な本にまだ出会えていないということだろう。そんな本に出会えるように、特にお弁当型の読書活動では、個に応じた選書の配慮を意識したい。そのときに有効なのが、いうまでのない、交流だ。
私たちはどのようなきっかけで魅力的な本に出会うだろう。それは、知人の紹介だったり、Amazonのレビューだったり、本を読んでいくうちに芋づる式に関連する本に手を伸ばしたりとさまざまだ。
そのような口コミや「キュレーション」の機能を十分に活用して魅力的な本に出会える場を設定することが有効だろう。
お弁当型の読書活動の課題は、選書と交流であろう。
立食パーティー型の読書活動
立食パーティーでは、パーティーの開催者が会場に料理を並べ、それを自由にとりわけさせる。これを読書活動になぞらえると、教師が並べた本を子どもたちが自分の興味関心に応じて本に手を伸ばし、それを読んでいくスタイルの読書活動になる。
テーマ読書等の取り組みで重要なのは、どのような読書活動の枠組みを作るかと言うことだ。
どのような本を教師がチョイスし、それをどのような切り口で子どもたちに選ばせ、さらにはどのような読み方の技能を活用させるかという点だろう。
この枠組みやねらいがしっかりしていればいるほど、教師のねらいに沿った効果的な読書活動になる。しかし、ねらいがぼやけ、資料の準備も不十分なものであれば、効果的な読書活動とすることができない。
ざっくりと言って、読書活動のねらいには、読書意欲を喚起させることをねらうのか(興味付け)、読書技能を高めるための活動なのか(読書技能の育成)、あるいは、そのテーに対する理解を深めることを目的とするのか(内容理解)、この3点のどれかに重点をあてた活動になるものと思われる。(もちろん両者は緊密に関連し合う)
さらに、読書活動をデザインする際には、どのようなねらいで、どんな本を用意し、それをどのように読ませるか、どんな学習活動や環境を用意するかという視点が重要になる。
立食ペーティー型は給食型に比べて子どもの自由度があるため主体的に読書に取り組めるというメリットがある。また、お弁当型に比べて教師が活動をコントロールしやすいことも利点である。それらの利点を生かした読書活動にするために、立食パーティー型の読書活動では、とくに緻密に学習をデザインすることが求められる。
立食パーティー型の読書活動の課題は、ねらいを明確にした授業デザインにあるだろう。