国語教育授業実践開発研究室
ブックカフェ(読書会)特設ページ
学校図書館や国語科の授業で読書会をやってみたい! という人のために「読書会」特設ページをつくりました。
ブックカフェ(読書会)ってどうやってやるの?
→授業で使用したプリントはこちら
中学生向けのブックカフェ(読書会)で取り上げる本について知りたい!
次のような本を取り上げました。
国語科授業で取り上げた課題本(中1→中2→中3)
※連続して取り上げている本もあります。
1年「ブックカフェⅠ」(2016年に実施)計13タイトル
『穴 HOLES』ルイス・サッカー 幸田敦子訳 講談社文庫 2006 │
『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス 小尾芙佐訳 早川文庫 2015 │
『いちご同盟』 三田誠広 集英社文庫 1991 │
『エイジ』 重松清 新潮文庫 2004 │
『おれのおばさん』 佐川光晴 集英社文庫 2013 │
『カラフル』 森絵都 文春文庫 2007 │
『夏の庭』 湯本香樹実 新潮文庫 1994
『西の魔女が死んだ』 梨木香歩 新潮文庫 2001
『ハッピーノート』 草野たき 福音館文庫 2012
『変身』 カフカ 高橋義孝訳 新潮文庫 1987
『ぼくらのサイテーの夏』 笹生陽子 講談社文庫 2005 │
『星の王子さま』 サン=テグジュペリ 池澤夏樹訳 集英社文庫 2005 │
『モモ』 ミヒャエル・エンデ 大島かおり訳 岩波少年文庫 2005 │
2年「ブックカフェⅡ」(2017年に実施)計8タイトル
『あと少し、もう少し』瀬尾まいこ 新潮文庫 2015 │
『穴 HOLES』ルイス・サッカー 幸田敦子訳 講談社文庫 2006 │
『宇宙のみなしご』森絵都 角川文庫 2010
『エイジ』 重松清 新潮文庫 2004 │
『鬼の橋』伊藤遊 福音館文庫 2012 │
『影との戦い ゲド戦記(1)』アーシュラ・K.ル=グウィン 清水真砂子訳 岩波少年文庫 2009 『西の魔女が死んだ』梨木香歩 新潮文庫 2001 │
『モモ』 ミヒャエル・エンデ 大島かおり訳 岩波少年文庫 1973 │
3年「ブックカフェⅢ」(2018年に実施予定)計9タイトル
『あと少し、もう少し』瀬尾まいこ 新潮文庫 2015 │
『穴 HOLES』ルイス・サッカー 幸田敦子訳 講談社文庫 2006 │
『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』米原万里 角川文庫 2004 │
『エイジ』 重松清 新潮文庫 2004 │
『怪物はささやく』シヴォーン・ダウト原案 パトリック・ネス 池田真紀子訳 創元推理文庫 2017 『影との戦い ゲド戦記(1)』アーシュラ・K.ル=グィン 清水真砂子訳 岩波少年文庫 2009 『君たちはどう生きるか』吉野源三郎 岩波文庫 1982
『村田エフェンディ滞土録』梨木香歩 角川文庫 2007
『羊と鋼の森』宮下奈都 文春文庫 2018 │
生徒に貸し出す本が足りない。借りられないか?
→本校で所有しているブックカフェの蔵書を、相互貸借でお貸しすることは可能です。
(直接取りに来ていただく(東京都文京区)か、送料をお支払いいただいてお送りするか、応相談で)
読書会の実践について研究したい
渡辺が研究したレポートが下記から読めます。
中学生はどのように一冊の本を読んだか〜中学校国語科における読書会の授業の開発〜
全国大学国語教育学会で提案したブックカフェ(読書会)の授業の開発です。
読書会自体は3年間継続して取り組んでいますが、そのなかでも1年目の試行錯誤について詳しく取り上げて分析しています。
ブックカフェ(読書会)をつくる~学校図書館と国語科授業の「二つの読書会」の挑戦とその課題~
学校司書奧山文子さんとの共著です。
上記と同じ内容ですが、学校図書館と国語科授業での読書会の実践を比較したレポートです。
学校図書館での読書会の取り組みについて詳しいです。
そのほか、読書会の授業についてご質問があれば、こちらのフォームにどうぞ。
読書会の授業についてのQ&A
渡辺(国語科教諭)と奥山(学校司書)で分担して書きました。2017年に行った読書会の公開研究会の研究授業の時に作成したものです。
A 準備について
Q1 学校司書と国語科教諭はどのような役割分担で授業を行っていますか?(渡辺)
国語科教員の渡辺が、授業計画や具体的な生徒に対する指導・支援を、学校司書の奥山は主に課題本の原案のリストアップ、貸し出しをしました。また読書会当日の話し合いの支援は二人で分担して行っています。課題本をどう読むかなどについての話し合いを随時行っています。
Q2 本をどうやって購入しましたか?(渡辺)
学校の図書費ではなく、渡辺の個人的な研究費で購入し、学校図書館に蔵書として寄贈しました。一回使って終わりではなく、中1~中3まで読むことができるような本を購入するようにしました。1タイトル20冊、8タイトルの本を揃えました。(120人の学年で160冊)
Q3 課題本はどうやって選びましたか?(奥山)
今回の読書会では、文庫本という制限がありましたので、岩波少年文庫、福音館文庫、各出版社の文庫目録から探しました。ロングセラー(長く読み継がれてきた本)、外国文学、日本文学、主人公が中学生くらいの男女。ファンタジー、リアリズムなどから幅広く選んだつもりです。また、読書が苦手な生徒のことも考慮して、読みやすい本も選定しました。
Q4 学校図書館の日頃の活動は?この読書会に関連した取り組みはありますか?(奥山)
長期休業前に「おすすめ本」のリスト発行、年に1回先生のイチオシ本の発行、館内に展示コーナー多数、ライブラリービンゴ、年に3回放課後ブックカフェを実施しています。
Q5 読書会をしてみて、生徒の読書はどのように変化したと感じますか?(奥山)
【カウンターで気づいた生徒の変化】
〇『モモ』を読んだ生徒が、面白かったので、エンデの『はてしない物語』を読みたい
〇自分の課題本を読み終わったので、他の課題本を読みたい生徒多数
〇『モモ』は両親も読んでいた。家族で『モモ』について話ができた
〇去年は『ぼくらのサイテーの夏』、今年は『穴』を読んだ。続編を読みたい。
〇『影との戦い』のあと、続編を読みたい生徒が4人(これまで2年間動かなかった)
〇昨年度の読書会の後、1年生3人が放課後ブックカフェに参加申込。
Q6 一番人気の本は何でしたか?(渡辺)
『宇宙のみなしご』が一番人気で、120人中80人が希望しています。森絵都という人気の作家であること、内容が身近なこと、薄くて読みやすそうという理由が考えられます。それに続いて『ゲド戦記』『あと少し、もう少し』が65人の希望者でした。アンケートで第一から第三希望まで希望をとり、最終的に教師がメンバーを調整し、各クラス3~4名になるようにしました。
B 授業について
Q7 この授業は学習指導要領のどの指導事項に対応していますか?(渡辺)
〇現行学習指導事項の下記に対応しています。
2年C「読むこと」
イ 文章全体と部分との関係,例示や描写の効 果,登場人物の言動の意味などを考え,内容 の理解に役立てること。
ウ 文章の構成や展開,表現の仕方について, 根拠を明確にして自分の考えをまとめること。
〇新しい学習指導要領では、以下の指導事項を念頭に置いています。(2年 C 読むこと)
ア 文章全体と部分との関係に注意しながら,… …登場人物の設定の仕方などを捉えること。
イ 目的に応じて複数の情報を整理しながら… …登場人物の言動の意味などについて考えた りして,内容を解釈すること。
Q8 教科書を使った読解・鑑賞の授業とこの読書会の授業はどう違いますか?(渡辺)
一番大きな違いは、課題本を選ぶことができること、短編小説ではなく、取り上げる作品の規模が大きいことです。それ以外には、学習の形態が多少異なります。
教科書の授業では、指導事項を絞り込み、課題をこちらで指示したり、活動を指定したりします。読書会では限定した指導事項というより、自分で選択した読み方を活用していくことがメインとなります。また、話し合う課題も自分たちで決め、自分たちで進行する点も異なると思います。ただし、教科書を使った授業でも読書会と全く同じ展開で学習することは可能です。
Q9 本を読んでおしゃべりすることが読む力につながっているんでしょうか。精読しないと力がつかないのでは?(渡辺)
何を持って「読む力」ととらえるかにもよります。読書会で取り上げている100ページ以上の文量の小説を読む活動と比べ、ほんの数ページの短編小説の教材を読む学習のほうが勝っているとはあまり思えません。
ただし、読書会で一冊の作品を読む際の読み方は、教科書教材の短編小説を読む読み方とは様々な点で異なっていることが考えられます。多くの文量から、ポイントを的確に押さえ展開をつかむ力、複数の叙述を組み合わせて登場人物の人物像を読み取る力などが必要になってきます。その規模が、短編小説とは比較にならないぐらい複雑で多岐にわたる点が異なります。(反対に、教科書教材のような短編は、きわめて少ない叙述から、読み手が想像力で補いながら解釈をする点に特徴があると考えられます)
Q10 本を読まない生徒はいませんでしたか? どうやって支援しましたか?(渡辺)
本を読まないことには読書会は成立しないので、とにかく全員が読み終わることができるように支援しました。夏休み前から貸し出しをはじめ、事前に三時間集中して本を読む時間をとったり、中間テストで簡単なあらすじをきく問題を出題したり、毎時間の生徒にふり返りを記入させ、そこから読書の進捗状況を点検し、滞っている生徒に声をかけたりと配慮しました。
Q11 課題本を決めることの是非は? 好きな本を自由に読ませるべきでは?(渡辺)
自分の好みに合わない本でも読まなければいけないという可能性があります。しかし、普段手に取りにくい本、しかも司書、教師の選りすぐりの一冊に触れ、選書の幅を広げることができる機会だともいえます。
また、同じ本を読んだ人と感想を交流し合い、自分とは違うものの見方や読み方と触れることのできる経験も得がたいものがあります。
Q12 評価はどうしますか?(渡辺)
生徒の活動状況を捉える評価と、最終的に成績を付ける評価とに分けてお話します。
〇生徒の活動状況を捉える評価では、次の点を見るようにしています。
①本を自力で読み進めることができるように様子を見守り、気になる子には声をかける。
②グループが聞き合う関わりになっているか交流の様子をみて、適宜介入する。
③互いの読みを足がかりにして深めていくことができるよう、話し合いのやりとりをみる。
〇最終的に成績を付けるための評価方法は、次の通りに行う予定です。
①「1枚ポートフォリオ」のまとめをみて、読む観点がどの程度豊かになっているかをみる。
②「置き手紙」をみて、読書会の対話が深め合うことができているかをみる。
③「事後のレポート」を見て、読書会で作品の魅力に迫ることができているかをみる。
C 他の学校で実践するために
Q13 本を買う予算がなかったり、揃わない場合はどうしたらいいでしょう。(渡辺)
各自で文庫本を購入させる、公共図書館でかき集めるなどの方法があると思います。(公共図書館は副本では貸し出さないところが多いので、読書会用に10~20冊程度まとめて貸し出すシステムがあると良いと思います。こういうシステムは、現場から必要性を訴えないと、待っていても絶対に変わりません。声を上げましょう。)
また、将来的には一人一台端末環境になり、読書もデジタル書籍に移行します。そうすれば、一気に読書会などの学習が行いやすくなります。
Q14 教科書が終わらないので、読書会をしている余裕がありません。(渡辺)
教科書の学習は軽めに扱い、捻出した時間で読書会を取り上げています。国語教育で何を大切にしたいか考えたとき、「一冊の本を手にとって読む」ということを、教科書を計画どおりにみっちりと取り組むことより優先しました。
大人になったら「教科書」はないわけで、いつまでも教科書だけを読むのではなく、本そのものを読む経験を授業でも取り上げることが重要なのではないでしょうか。
Q15 生徒はあまり本を読まないので、読書会はできそうにありません。(渡辺)
この授業だけでなく、年間を通して本を読むことや図書館で授業をすることを当たり前にしてきました。授業の毎時間10分の読書タイム、本紹介などの活動に継続的に取り組んでいき、読書を生活の一部になるように意識しました。
そのような読書習慣が十分にない場合は、まずは絵本などの軽めの題材から読書会で取り上げると良いのではと思います。
Q16 中学生に読ませたいおすすめ本をどうやって探せばいいですか?(奥山)
『物語の森へ 児童図書館基本蔵書目録2』(東京子ども図書館,2017年)がお薦めです。他にも様々なリストがあります。司書に相談してください。